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介護した子は多くもらえるのか——寄与分と「嫁の介護」が認められる制度

介護した子は多くもらえるのか——寄与分と「嫁の介護」が認められる制度

「10年間、仕事を辞めて親の介護をしてきました。何もしなかった兄弟と同じ取り分というのは納得できません。」こうした問題に対応するのが「寄与分」と「特別の寄与」の制度です。ただし、いずれも「親の面倒を見た」というだけでは認められず、法律上の要件を満たす必要があります。

1. 寄与分とは(民法904条の2)

寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の事業への貢献・財産上の給付・療養看護等によって被相続人の財産の維持または増加に「特別の寄与」をした者がいる場合、その貢献に見合った分だけ相続取り分を増やす制度です(昭和55年創設)。

寄与分の計算式

みなし相続財産 = 相続開始時の遺産 − 寄与分額

寄与者の具体的相続分 =(みなし相続財産 × 法定相続分)+ 寄与分額

計算例

遺産2,000万円、相続人:子A・B(各1/2)、Aが療養看護により100万円の寄与分を認められた場合

みなし相続財産:2,000 − 100 = 1,900万円

Aの具体的相続分:1,900 × 1/2 + 100 = 1,050万円
Bの具体的相続分:1,900 × 1/2 = 950万円

2. 寄与分が認められる4つの要件

寄与分は「相続人が親の面倒を見た」というだけでは認められません。次の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 寄与行為の存在——具体的にどんな行為をしたか
  2. 「特別の寄与」であること——通常期待される扶養の範囲を超えること
  3. 被相続人の財産の維持または増加——介護費用の節約、財産の維持等
  4. 寄与行為との因果関係——その行為があったから財産が維持・増加した

「特別の寄与」かどうかの判断で特に重要なのは、通常の扶養義務を超えているかという点です。夫婦間では民法752条の同居・協力・扶助義務が、親子・同居親族間では民法877条の扶養義務がありますから、その範囲内の行為は寄与分として認められません。

3. 寄与分の5つの類型と算定方式

裁判実務では、寄与の態様を次の5類型に整理し、それぞれ算定式が確立されています(最高裁事務総局編・家庭裁判資料第159号、平成6年)。

類型 典型例 算定式(目安)
家業従事型 農業・自営業を無給で手伝った 同種業務の年間報酬額 × (1-生活費控除割合) × 年数
金銭等出資型 被相続人の事業・不動産購入に資金を出した 相続開始時の当該財産価額 × (拠出額 ÷ 取得時価額)
扶養型 生活費を長年負担した 現実に負担した扶養料額 × 期間 × (1-法定相続分)
療養看護型 介護・看病を担った 付添婦の日当額 × 療養看護日数 × 裁量的割合
財産管理型 賃貸不動産の管理・修繕費支出 第三者委任の場合の報酬額 × 管理期間 × 裁量的割合

療養看護型が最も争いが多い

実務で最も問題になるのが「療養看護型」です。認定のポイントは次のとおりです。

  • 介護の必要性が高いこと(要介護認定等が参考になる)
  • 継続性(長期間にわたること)
  • 専従性(他の仕事をやめて介護に専念しているか)
  • 通常期待される程度を超えること

「ヘルパーや施設に頼まなかったから費用が節約できた」という財産維持の観点が特に重要です。逆に言えば、専門介護職に頼んでいれば発生したはずのコストを節約したという構造で主張するのが実務上のアプローチです。介護日誌・医療記録・ヘルパー利用を断った記録等を早期に整理しておくことが証拠面で不可欠です。

4. 寄与分の制約——遺留分・遺贈には勝てない

寄与分には重要な制約があります。

優先順位:遺留分 > 遺贈 > 寄与分

寄与分は、遺贈(遺言による贈与)の価額を控除した残額を超えることができません(民法904条の2第3項)。また、遺留分侵害額請求訴訟(民事訴訟)の中で寄与分を抗弁として主張することはできません。寄与分は家庭裁判所の遺産分割手続の中でのみ主張できます。

令和3年改正——10年ルール

令和5年4月1日以降、相続開始から10年を経過した後に遺産分割をする場合は、原則として寄与分の主張もできなくなりました(民法904条の3)。長年の介護実績があっても、遺産分割の手続きを先延ばしにしていると主張できなくなるリスクがあります。早期に手続きを進めることが重要です。

5. 「嫁の介護」——特別の寄与制度(民法1050条・平成30年改正)

寄与分は「共同相続人のみ」が請求できます。つまり、息子の妻(嫁)など相続人でない親族がいくら介護をしても、従来は寄与分を主張できませんでした。この不公平を解消したのが、平成30年(2018年)改正で新設された特別の寄与制度です(令和元年7月1日施行)。

制度の概要

相続人以外の被相続人の親族が、被相続人に無償で療養看護等の労務を提供し、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求できます。

典型例:息子の妻が義父母を長年介護した場合 → 息子の兄弟姉妹(他の相続人)に特別寄与料を請求できる。

請求できる人(特別寄与者)の範囲

対象 具体例
相続人以外の被相続人の親族
(6親等内血族・配偶者・3親等内姻族)
息子の配偶者(嫁)、孫、おい・めい等
対象外 内縁の配偶者、相続放棄者、相続欠格・排除該当者

請求期間——厳格な期限あり

期限:相続の開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年のいずれか早い方
この期限は非常に短く、逃すと請求権を失います。介護の実績があり、相続人以外の立場でも特別寄与料を検討している場合は、相続開始後すぐに弁護士に相談することが不可欠です。

特別寄与料の上限と手続き

請求の上限額 = 被相続人の遺産総額 − 遺贈の価額

例:遺産1,000万円、遺贈300万円 → 上限700万円

手続きとしては、まず相続人と協議し、協議が調わない場合は家庭裁判所に審判申立てをして特別寄与料の額を決定します。

まとめ——寄与分と特別の寄与の比較

制度 誰が請求できるか 期間制限 手続き
寄与分(民法904条の2) 共同相続人のみ 相続開始から10年(令和3年改正) 遺産分割の調停・審判
特別の寄与(民法1050条) 相続人以外の親族 相続開始+相続人を知った時から6か月または相続開始から1年 相続人との協議 → 家庭裁判所

介護を担った方の貢献が正当に評価されるためには、貢献の具体的記録(介護日誌・領収書・医療記録等)を早期に整理し、専門家に相談することが大切です。「どれくらいもらえるか」「そもそも認められるか」は個別事情によって大きく異なります。

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弁護士
監修
加山 綾一(弁護士・東京弁護士会 登録番号39453) 明治大学法科大学院修了。2010年弁護士登録(東京弁護士会)。法律事務所LAB-01所属。企業顧問先多数、社外取締役・監査役等を兼務。「紛争になる前に弁護士が関与する」を掲げ、相続サポートに注力。